Blog

シンポジウム講演概要の公開

March 9, 2018

東日本大震災、福島原発事故から7年。
地震・津波と原発事故という複合災害に見舞われた福島。いまもなお、立ち入りが制限されている地域が多い中、被災地は、少しずつ色を取り戻そうと前にも進んでいます。
     
震災後、現地の農家の方々とともに獣医・畜産系や農学系の研究者が集まり地道に研究活動に挑んできた7年。これまでに得られてきた科学的なデータを読み解くことで明らかになってきたことは何か。低線量被ばくの影響ついて7年にわたる調査・研究経過などをシンポジウムで発表いたします。

   

   

●研究会の今までの活動と最新研究概要

岡田 啓司

原発事故被災動物と環境研究会 理事・事務局長、岩手大学教授

    

 2012年9月に日本獣医師会の支援によって設立された一般社団法人 ”福島第一原子力発電所事故に関わる家畜と農地の管理研究会” と、その後継組織である一般社団法人 ”原発事故被災動物と環境研究会” が行ってきた、福島第一原発事故警戒区域内における被ばく牛および牧場の学術調査の概要についてお話しします。マウスやラットの被ばく実験の報告はありますが、大型哺乳類の被ばく実験は事実上不可能であり、福島で行われている被ばく牛の調査は、世界に類を見ない貴重なデータになると考えています。“ネガティブ”な事故をなかったことにするのではなく、“ポジティブ”な人類の科学遺産に転換できればと思っています。

    

   

●帰還困難区域における環境放射線量等の評価

  1. 浪江町小丸牧場における土壌放射線量の実態と年次推移
    寳示戸 雅之                              北里大学獣医学部フィールドサイエンスセンター 教授 / 草地土壌学

  • 820m×160mの敷地を46m間隔のメッシュで区切り、2013年5月から2016年10月にわたって地表から0.3、1.0、1.5mの空間線量を電離箱を用いて測定しました。また、代表的地点において土壌サンプルを採取し、NaIシンチレーション検出器で137Csと134Csを測定しました。別に採取した100ccコアによる体積密度を併用して単位面積あたりの137Csと134Csも求めました。なお、134Csについてはサンプリング時点の値に補正しました。

  •   放射性Csの不均一な分布
    土壌の放射性Csは平面的な不均一性が著しく、乾土当たりの放射性Cs量が半径5m以内で2倍以上違いました。
    (2)  土層間の移動
    土壌各層の放射性Csの年次変動から、土壌表層0-5cmへの放射性物質の集積が推察されました。

 

      

2. 黒毛和牛の外部被ばく評価                                  

夏掘 雅宏 

北里大学獣医学部教授  / 獣医放射線学 

 

福島第一原子力発電所の事故によって放出された原子炉内の放射性核種によって広範なエリアが汚染されました。警戒区域が解除され,除染された地域も増えつつありますが,今もなお帰宅困難区域となっている地域も少なくありません。私達は,主に浪江町や大熊町の協力農家の方々の牧場の土壌,空間線量のモニタリングやその他のデータから空間線量および外部被ばくの要因として重要な放射性核種と土壌汚染の実態、そして牛に装着した線量計やモニタリングポストのデータから牛が受けた外部被曝線量(表面線量)について解説します。

   

    

3.黒毛和牛の内部被曝評価

伊藤 伸彦

北里大学名誉教授 / 獣医放射線学

    

放射線の生体への影響を評価するためには、外部被ばく線量と内部被ばく線量を正確に把握して比較する必要があります。しかし、内部被ばくの測定は非常に難しく、例えばホールボディカウンターで体内の汚染を知り得たとしても、個々の体内臓器がどれだけ放射線を吸収したかを測定することは非常に困難です。また人間では内部被ばく評価のための研究が古くから行われていますが、牛に関する研究は皆無といっても良いと思います。ここでは、解剖された牛の臓器中の放射性物質濃度を基にして、コンピューターシミュレーションを用いて、20km圏内で継続飼育されている牛たちの内部被ばく線量推定について、これまでの成果をご紹介します。

   

    

●帰還困難区域における牛の健康状況

   

1.牛の健康評価および被ばくの影響

岡田 啓司 
岩手大学 農学部共同獣医学科教授 / 生産獣医療学

    

研究会に参加している12戸の農家の牛は、事故後は7カ所の牧場で飼養されていましたが、現在は3カ所に集約されています。牛たちは広々とした放牧地で自由に生き続けていますが、除染されていない牧場では、今でも1〜18μSv/hという環境中の放射線に持続的に曝され続けており、また春〜秋は放射性物質に汚染された山野草を食べ続けています。この牛たちの健康状態はどのように変化してきているのかを、様々なデータからわかりやすく検証します。

    

    

2.放射性セシウムによる汚染状況と体内分布

佐藤 至
岩手大学農学部附属動物医学食品安全教育研究センター教授 / 環境衛生学

    

福島第一原発事故により東北の畜産業は大きな打撃を受けるとともに、食の安全に対する消費者の懸念も高まりました。ここでは、食の安全と畜産の復興の視点に立った研究成果として以下の3点についてお話しします。 1)環境の汚染レベルと牛の汚染レベルとの関係 2)放射性セシウムの分布の特徴と牛肉検査方法の妥当性 3)生きている牛の汚染レベルを尿を使って推定する方法  除染が進み各地で避難指示が解除されて来ています。今後これらの地域で畜産業を再開するにあたり、私たちの研究成果が多少なりともお役に立てれば幸いです。

    

    

3.黒毛和牛における放射性セシウムの体内動態と飼い直しによる内部汚染除去の試み 島岡千晶・夏堀雅宏
北里大学獣医学部  / 獣医放射線学

    

牛や黒毛和牛に放射性セシウムが飼料を介して体内に取り込まれることでそれぞれの臓器にどのように分布してその後どのように消失していくのか?このメカニズムが明らかになることで今回の原子炉災害のような状況がもしまた再現され,家畜が一時的に放射性物質によって汚染されたとしても体内からそのほとんどを除去する方法を明らかにすることが可能となります。本研究では,他施設との共同研究によって,これまでに明らかになった黒毛和牛についての放射性セシウムの体内動態パラメータとその応用によって安心・安全なレベルにするための和牛の飼い直し方法について具体的に提案いたします。

    

    

4.被ばく牛の病理

佐々木 淳
岩手大学農学部共同獣医学科助教 / 獣医病理学

    

被ばくに関連した健康被害として、ヒトでは広島・長崎の被爆者でみられた白血病や、チェルノブイリ原発事故後に増加した小児甲状腺がんなどが知られていますが、福島の被ばく牛ではどうなのか。私たちはこれまで被ばく牛を解剖して被ばくの影響について調査してきました。今回は特に、①牛白血病、②甲状腺の腫大、③皮膚の白斑などについて、これまで得られた病理学的な知見を分かりやすくお話します。

    

 

 

 

Share on Facebook
Share on Twitter
Please reload

Featured Posts

I'm busy working on my blog posts. Watch this space!

Please reload

Archive
Please reload

Follow Me
  • Grey Facebook Icon
  • Grey Twitter Icon
  • Grey Instagram Icon
  • Grey Pinterest Icon